Molecule of the Week (8)

 嫌われ者の昆虫ナンバーワン、チャバネゴキブリの性フェロモンが構造決定されたとの報告がなされました。単離したのは野島らのグループで、メスのゴキブリのしっぽにある腺を約15,000匹分集め抽出したそうです。これだけのゴキブリを集めても得られたのはわずか10マイクログラムほどで、化合物が熱に不安定でもあるため構造決定(NMR,MSなどによった)には大変な苦労があったものと思われます。

 化合物はゴキブリの学名(blattella germanica)と、キノン骨格(左方の6員環部分)を含む構造から「ブラッテラキノン(blattellaquinone)と命名されました。キノンを含む化合物を防御物質として使っているゴキブリが他にもいることから、この化合物ももともと防御物質であったものが性フェロモンに転用された可能性があります。

 ブラッテラキノンは見ての通り不斉炭素のない比較的単純な構造ですから、市販されている一般的な試薬からたったの2段階で合成することが可能です。この化合物はわずか約1億分の1gでオスゴキブリを引きつける能力を示すということなので、10gも作ればそれこそ日本中のゴキブリを集められそうですが、まあくれぐれも悪用することのないよう(笑)。

 

 Science 307, 1104 (2005) S. Nojima et al. 

 

 関連項目

 フェロモンの話

 昆虫〜小さな化学者たち〜(1)  昆虫〜小さな化学者たち〜(2)

 

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