国道254号線を行く・その2

 ということでR254の旅はさらに北西へ向かう。深谷市(旧・花園町)でR140(埼玉県熊谷市〜山梨県増穂町)と重複するあたりは車線が増えてなかなかにややこしいのだが、単独区間に入ってからはややしょぼくれた道に成り下がる。ちなみにR140もなかなか凄いところを走っているので、いつか機会があれば紹介したい。


埼玉・群馬県境を静かに流れる神流川。この後鏑川、さらに利根川に合流する。

 てなことで藤武橋で神流川を渡り、群馬県に入る。ここからR254は進路をほぼ真西にとり、雰囲気も若干変わってくる。今まで「児玉往還」を名乗ってきた道も「信州街道」または「姫街道」へとその名を変える。

 「姫街道」という名称は浜名湖付近のR362とかあちこちにあり、いずれもいわゆる脇往還と呼ばれる道である。江戸時代は「入り鉄砲に出女」なんてことをいって、大きな街道では女性の通行が関所で厳しく取り締まられていた。というわけで姫君はそれほど警備の厳しくない脇往還を通ることが多く、これらに「姫街道」の通称がついているわけである。言うまでもなくこのへんのメインルートは中山道(現在はR18に引き継がれている)で、R254はあくまでサブルートであったわけだ。といっても富岡市内のR254なんかは4車線に整備された立派なバイパスで、R18にも負けない造りになっているのであるが。


富岡市内にある「姫街道」の標識。しかし「街道通り」って表現はどうなんだろか。

 さて東京都心からはR254の他、R122・R246と3本の3桁国道が出発している(R130・131という港国道もあるけど、まあこれは短距離路線なので除外)。で、実はこの3路線はちょっと似たキャラクターを持っているのである。

国道の歴史をたどると、まず昭和27年(1952年)にR1〜R40の幹線が、その翌年R101〜R244の3桁国道1期生が指定を受けた。で、昭和30年代にはそこで指定に洩れた路線がぽつりぽつりと追加指定(R245〜R271)となっており、前述の3路線はいずれもこの時期に誕生した国道なのである(R122だけ番号が若い理由はR50の項参照)。

 R122・R246・R254が古くからある街道であるにもかかわらず国道指定が後回しにされたのは、この3本がそれぞれR4・R1・R17〜18に併走する、いわば脇街道的存在だったからだろう。今や3路線とも周辺の開発が激しく、道路自体の整備も1桁路線に負けないほど進んでいるが、国道指定当時は田園地帯を通るのどかな田舎道だったわけだ。


本文とは関係ないが、下仁田町にある有名な珍名駅、「南蛇井」(なんじゃい)。実にのどかな駅です。

 ちなみにこの3路線、首都圏付近では高速道路が併走しているのも共通点である(R122は東北道、R246は東名高速、R254には関越道〜上信越道がほぼ並行している)。高速建設が始まった1960年代には、すでに幹線道路の周辺は開発が進んでいたためもはや高速を通すスペースがなく、必然的にこれら3路線が高速のサポート役を務めることになったと推測される。世の中ナンバー1だけがもてはやされがちだが、ナンバー2にもナンバー2なりの仕事があるということだろう。

 長々とうんちくを語っている間に群馬県最後の町、下仁田町に入る。ここはコンニャクが名物で、道の駅でもコンニャクが――と思ったらなぜかにんにくラーメンやそば屋、ソフトクリームにパン屋さんなどが並んでいたりする。円形に店が並んだ、ちょっと面白い形式の道の駅である。


道の駅しもにた。筆者はカレーうどんを食ったが、これが案外いけた。

 てなことでここからは本格的な山道に入る。コンビニやガソリンスタンドもなくなるので、下仁田の市街地のうちに人も車も補給は早めにしておくことをおすすめする。山道の途中で燃料の赤ランプが点灯し、ガス欠の恐怖と闘いながら峠道を登るくらい心臓に悪いことはなかなかない。

 群馬〜長野の県境には険しい山脈が立ちはだかっており、ここを越える道はいずれも厳しい峠道である。有名なのは国道18号碓氷峠だろうが、これは184ものカーブを連ねた(筆者所持のマニアックな資料による)いろは坂どころではない山道であり、これに並行する上信越自動車道もこの区間は10本のトンネルが連続する、全国の高速道路の中でも指折りの難所である。

R254の県境にそびえる内山峠もその例に洩れないつづら折りの峠道で、この長距離国道における最大の難関といっていい。長い上り坂の間、行く手にそびえ立つのが荒船山で、ちょっと日本の山とは思えないような垂直に切り立った奇岩が山頂にデンと構えている。横っ腹にアメリカの大統領の顔でも彫刻したら似合いそうである。


左上に見えるのが荒船山頂の艫(とも)岩。確かに航空母艦みたいに見える。

 峠道からは時折デンジャラスな雰囲気の旧道も見え隠れするが、現役のR254はさすがにしっかりとした道である。登り切ったところに控えるのが全長1254mの内山トンネルで、説明書きによればこいつのおかげで走行距離が2.5km縮まり、最高標高が120m低くなったそうである。冬場に危険な峠道をえっちらおっちらと登る難行苦行を考えれば、このへんの整備はドライバーにとって実にありがたいところである。

 さて以前R292編で1.1%の急勾配標識というものを掲載したが、この内山トンネルの真ん中あたりにこれを下回る0.5%の標識があった。どうやらこれが今のところ全国最緩の勾配標識らしい。こういう変な物を見つけるのもまたマニアの楽しみであったりする。


ここから勾配が下りに切り替わることを示すのだろう。

 てなことで、長野県突入後はパート3にて。

 

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