国道254号線を行く・その3

 てなことでR254の旅パート3、長野県編に突入。

 内山峠の長野側は群馬側に比べて比較的緩やかな坂道で、10月には沿道にコスモスが美しく咲き乱れることで知られる。道幅も十分に広く、紅・ピンク・白の入り交じった花々が風に揺れる中、気分良く快走できる。「コスモ」というのは本来「宇宙」とか「秩序」という意味のはずだけれど、この可憐な花に誰がこんな雄大な名前をつけたのだろう。いずれにせよ、ここらは関東近郊の国道の中でも屈指の景観といってよさそうだ。


コスモス街道。ちなみにコスモスは気温でなく日照時間で開花時期が決まるので、全国ほぼ一斉に咲くそうである。

 よく整備された広い道を快調に飛ばし、佐久市街に突入する。佐久市にはR141・R142・R254の3国道が集まってきており、それぞれ造りかけのバイパスがあって行くたびに状況が変わっていてややこしい。地図を見てもどれが何号かわかりにくく、うかうかしているとすぐ迷うので注意が必要である。


うおっ、どこに行けばいいのだ。ちなみに業界ではこれを「三方開花」と称する。

 ちなみにかつてはR254は佐久市からR141と重複し、小諸市に向かっていた。しかし1970年にルートの変更がなされて佐久〜松本の区間が組み込まれ、R142と重複して西へ向かうように変わっている。このへんもルーティングのややこしさの原因になっているのであろう。

 このR141(山梨県韮崎市〜長野県上田市)沿線には、ここに併走する形の高速道路「中部横断道」が建設中である。まあ佐久市内は確かに混む場所もあるが、その他の部分の交通量は知れたもんである。山だらけでトンネルをたくさん掘らねばならないから建設費用もかさむ。正直あまり需要が見込めるとは思えないのだが、工事の方は例によって着々と止めようもなく進んでいるようである。


高速道路接続予定地を示す標識。交通量はご覧の通り。

 この近辺はかつての中山道をトレースしたルートで、旧道とおぼしき脇道には宿場町の風情を残す建物がけっこう残っていたりする。風格のある農家の軒先に古いトヨペット・クラウンなんかが止まっていると、ちょっとしたタイムスリップ気分にもなる。このへんの風情を楽しみながらの裏道ドライブというのもなかなか悪くはない。

 

 さて立科町のはずれでR254はR142と分かれ、ふたたび単独区間に入る。ここの峠越えがR254全線で一番しょぼい区間であろう。都心の春日通りとこれが同じ国道254号というくくりになるのかと思うと、毎度のことながら行政というやつのやることは不思議である。


軽トラが行き交う渋い生活道路。

 しょぼくれ区間を越えると、「マルメロの駅ながと」付近でと国道152号と合流する。この道の駅については以前もR152編で書いた通りだが、町の名はいつの間にか「長門町」から「長和町」に変わっていた(長門町+和田村)。ちなみに「長門」という町名も「長久保新町」+「長窪古町」+「大門村」の合成であるから、和田峠(R142)・大門峠(R152)という由緒ある峠の名は自治体名からは消えてしまったわけだ。やがては地図からも人々の記憶からも消え去ってゆく地名たちではあるが、せいぜいこうしてインターネットのサーバに記録として刻みつけておくことにする。

 R152との重複区間は3kmほどで終わって、R254は進路を再び西に取る。後は内村川の作る谷筋沿いに、のんびりと終点松本を目指すだけということになる。

 さてこのへんのガードレールには妙な「顔」がついている。蛍光のシールを貼り付けて作ったとおぼしき、鬼の面のような奇妙な顔がそこここに点在しているのである。

 

ガードレールの謎の顔。

 以前ニュースで、東京の一警察官のアイディアでこうしたシールを貼って回り、居眠り事故の防止に役立てているという話をやっていたから、これもそれに倣ったのだろうか。人の注意を引く図柄をいろいろ追い求めていくうちこのような鬼の面にたどり着いたのだそうで、確かに夜道などで目に入ると一瞬ドキッとさせられる。人の顔というのは最も優秀なアイ・キャッチャーであるそうだが、うまくその効果を生かしたいいアイディアなんではないだろうか。

 

 ということでR254は最後の難所、三才山峠にさしかかる。麓から見上げると折り重なる山々が夕陽に照らされて行く手を遮っており、行く道の厳しさを雄弁に物語っている。昔の旅人はさぞかしここで気合いを入れ直さねばならなかったのだろうが、現代の我々はアクセルに置いた右足にちょっと力を込めるだけでこの長大な峠を越えられる。三才山トンネルの料金は400円と安くはないが、ここは日本の土木技術のありがたさに敬意を払いつつチャリンと小銭を手渡し、全長2510mの暗闇を駆け抜けることとする。


三才山峠東側。ちなみに「さんさいやま」ではなく「みさやま」と読む。

 こうして走り抜けるだけは簡単だが、してみるとトンネル開通前はどうなっていたのか。例によって旧道探検ということで、並行するそれらしき道に入り込んでみた。


渋いぜ火の見やぐら。

 小さな集落を結ぶ1車線がやっとの細い道だが、現在も路線バスなど通っていて、国道ではなくなっても生活道路としては健在であるようだ。ほんの100m先の国道を80km/hで次々に車が駆け抜けていくのを尻目に、ここでは時間がゆっくりと流れている。いわゆる観光地よりも、筆者はこういうところの風景の方が心が安まる思いがする。

 トンネルを抜ければゴールの松本市街まではあと一息だ。それにしても長い路線ではある。


東京から214km、東京まで214km。遠いけれど、確かに一本の道でつながっている。

 と思ったら、R254は最後にもう一つ「松本トンネル」という有料道路が待っている。このトンネル開通前は、R254は現在の県道282号線のルートをたどって市内中心部まで行き、R143交点の美須々交差点で終わっていたようだ。

 松本市は長野県のほぼ中央に位置し、R19(長野県長野市〜愛知県名古屋市)が貫通する他、R143・R147・R158・R254の4路線の起終点を抱える交通網の要である。というわけで市内中心部に流れ込む車を少しでも減らすべく、郊外に車を逃がす松本トンネルを造ったようだ。だが当初は料金が300円とさすがに割高であったため通る車が少なく、今は100円へと引き下げになった。がそうなると建設費の償還も長くなるわけで、このへんなかなか調整が難しい。

 トンネルを抜け、坂を駆け下りたところがついにゴール地点「平瀬口」交差点で、R19にぶつかって終了となる。ちなみに交差点の向こう側はR147(〜長野県大町市)で、こちらもバイパス開通で最近終点が移ったところだ。何もなかった山地から、トンネルを抜けたとたんに松本市街と美しい橋が出現するエンディングはなかなか印象的である。


アルプスに沈む夕陽を眺めつつ、R254の旅は終了。向かいの橋はR147終点、アルプス大橋。

 というわけで全線223.6kmを走り切った。R17やR18といった大幹線の陰に隠れてはいるけれど、チームになくてはならない中継ぎエース、スーパーサブ、mihimaruGTの男の方、というような存在の路線である。

距離以上に走り応えのある道ではあるが、そう厳しい酷道区間があるわけでもなく、群馬から長野区間は沿線風景もなかなかよろしい。東京〜川越間は好き好んで走る道ではないかもしれないけれど、R16から先はドライブコースとして悪くない路線であると思う。関東から長野方面に向かうなら、トンネルだらけの上信越道や、厳しいくねくね道で同乗者の車酔いを誘発するR18だけでなく、こちらR254のご利用もおすすめしたい。特に秋のコスモス街道は一見の価値ありなので、この時期にドライブに出るならコースに組み込んでみてはいかがだろうか。

 

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