Molecule of the Week (42)

 

cucurbit[6]uril。左はCPKモデルで真上から、右はスティックモデルで斜め上から。

炭素がオレンジ、窒素が黄色、酸素が赤。

 ここ数年、この季節になると店頭にハロウィン関連グッズを見かけるようになってきました。ハロウィンのシンボルといえばカボチャをくり抜いて作る灯籠(ジャック・オ・ランタンというそうです)で、10月31日の夜には各家庭の玄関や窓辺にこのオブジェが飾られます。このため欧米では、この時期になると形のよいオレンジ色のカボチャが飛ぶように売れるそうです。

 有機化学の世界にも、ハロウィンにふさわしいカボチャ型分子があります。cucurbiturilという化合物がそれで、グリコウリル(glycouril)という単位がいくつか環になったような、カボチャ(学名cucurbitaceae)型の化合物であることからその名が付きました。文字通り上下が底抜けになった、中空の球のような構造です。

 こうした筒状分子の例に洩れず、cucurbiturilも内部に小さな化合物を取り込む性質があり、近年超分子化学の素材としてよく使われています。アミン類を特に効率よく包み込む性質を利用し、cucurbiturilがたくさん通ったネックレス状の分子なども合成されています。

 cucurbiturilは、ホスト分子の先輩格であるクラウンエーテルカリックスアレンシクロファンなどに比べて、安く簡単に合成できるという大きな利点があります。しかし溶媒に溶けにくく、これ以上反応する場所がないため加工性に欠けるところが今のところ難点といえば難点です。ただしこのあたりも最近さまざまな工夫がなされてきており、今後実用的な用途(重金属イオンを内部に閉じ込める性質を生かして水質浄化に役立てるなど)が拓ける見込みは十分ありそうです。

 それにしてもこの「cucurbituril」という名前が日本語で表記されているのを見たことがありませんが、何と発音すればよいのでしょうか?ご存知の方はご教示いただければ幸いです。

 

 総説:Angew. Chem. Int. Ed. 2005, 44, 4844 〜4870

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