Molecule of the Week (14)

 

 純金(?)のフラーレン、Au32とAu42

 サッカーボール分子・フラーレン(C60)の発見以降、炭素以外の元素でも似たような構造を作りうるのではないかという興味が持たれ、様々な理論計算が行われています。こうした「エキゾチック・フラーレン」のうち、現在のところケイ素から成るSi60、ホウ素と窒素から成るB36N24などが安定に存在しうるのではないかといわれています。また窒素だけから成るN60はフラーレンのような球形ではなくでこぼこした形になり、高エネルギーであるためロケット燃料として使えるのではないか、などといった予測もなされています。

 こうした研究の中から、ちょっと意外な元素として「金」でできたフラーレンの可能性が示唆されています。金原子の三角形から成る多面体分子(上図)が、コンピュータによる理論計算で安定に存在しうるのではないかという予測がなされているのです。これらはC60に似た芳香族性を示し、全体として安定化されていると考えられます。

 ただし理論と実際はまた別のことであり、理論的に存在しうるからといってそれが実際に必ず作り出せるといったものではありません。しかし炭素のフラーレンは理論的予測から15年後に実現しましたし、金のフラーレンでも計算によって予言された分子が後に合成された例がすでにあります。下に示すWAu12という分子がそれで、金でできた正20面体の中心にタングステン原子(水色)が内包された構造です。これは中心のタングステン原子が全体を安定化させており、空のAu12では不安定になるそうです。

 金属のナノメートルサイズの塊(クラスター)は、大きなサイズの時とは違う不思議な振る舞いをすることが明らかになってきています。こうした金のフラーレンも触媒や他の分子の運び手(キャリアー)などとして、新しい可能性が切り開かれるかもしれません。金が単なる装飾品や貨幣の原料にとどまらず、ナノテクの旗手として活躍する日は果たしてやってくるでしょうか?

 Angew. Chem. Int. Ed. 2004, 43, 2678 M. P. Johansson et al.

 J. Am. Chem. Soc. 2005, 127, 3698 Y. Gao et al.

 

 関連リンク:サッカーボール分子・バックミンスターフラーレン

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