国道459号線を行く〜その1〜

 日本最大の島である本州には、300本以上の国道が縦横に走っている。しかしただ1本だけで太平洋側から日本海側までを結んでしまう、「本州横断国道」というのは実はあまり多くない。

特に国土が「分厚い」関西以東にはこうした路線は数えるほどしかなく、その多くはR17, 41, 49, 105などと比較的若い番号のついた幹線国道である。主要な道路から順番に国道に指定されていったわけだから、これはまあ当然といえば当然のことである。

 ところが400番台で唯一、日本を横切ってしまう国道が存在している。今回登場する国道459号線がそれで、新潟県新潟市から福島県浪江町までを結ぶ、全長269kmの(スペックだけ見れば)実に堂々たる路線である。

といってもその実態は、かつての有料道路、民家の軒先、山中の細道などを一貫性もなく寄せ集め、十把ひとからげにR459の名を関しただけの弱体路線である。R157, 418, 439, 477といったメジャーどころの酷道に比べると知名度は今ひとつだが、その変さ加減は一部の好事家の心を惹きつけるに十分である。というわけで今回は終点福島側から走行開始。

 

 で、浪江町の終点であるが、R294などのケース同様ここにはR459の文字は影も形もなく、あるのはR114(福島県福島市〜福島県浪江町)の標識である。R459は法律上ここから始まっているが、ずっとR114と重複して進み、単独区間として姿を現すのは30km以上先のことになる。何のためにこういう重複区間があるのか、毎度のことながら国道の起終点の決め方というのは謎だらけである。


終点は浪江町役場の前。R6(東京都中央区〜宮城県仙台市)から分岐する。

 ちなみに両端のどちらが起点になるかは、普通は大きな都市の側、同じくらいの町であれば東か北にある側が起点になると決められている。この場合浪江町は東側だが、大都市ということで新潟の勝ちになったのだろう。

 というわけでR114に間借りをしつつ、R459は西へ向けて発進する。請戸川に沿った淡々とした山道であるが、秋なんかに来れば通りの風景はなかなかのものである。


渓流沿いの紅葉が美しいのには何か科学的な理由があったと思ったが、詳しくは忘れてしまった。

 いくつかトンネルやダムを越え、浪江町の西の端でR114からR399(福島県いわき市〜山形県高畠町)へスイッチ、その直後ようやく大高木交差点でようやくR459単独区間に入る。最初のおにぎりを拝むまで1時間近くを要する、なかなか面倒な国道である。

 ようやく分離独立を果たしたR459ではあるが、その後も地味な淡々とした田舎道が続く。爽快に飛ばせるわけでもなし、何か見どころがあるわけでもないが、筆者としてはこれはこれで嫌いではない。


のんびりとしたあぜ道ライクな区間。別に新宿や渋谷だけが日本ではないのである。

 この後岩代町内でR349と一瞬重複し、また離れる。国道同士の交差点でありながら信号もなかったりするのがまた味わいがあってよろしい。福島の国道といえば、豪華な1・2桁の幹線道路と、アナーキーな状態のままに放置されている300番台以降にはっきり二分されるという印象だったが、最近になって後発路線にもようやく整備の手が回り始めたようで、特にこの近辺は来るたびに様子が変わっている感じがする。

 さて「見どころがない国道」と書いたが、このR349交点付近には「福田寺の糸桜」「合戦場(かっせんば)の桜」と呼ばれる見事なしだれ桜がある。しだれ桜といえばここから20kmほど南西にある「三春の滝桜」があまりにも有名であるが、これらの桜はそれぞれその子、孫にあたるらしい。滝桜はシーズンには渋滞を引き起こすほどに観光客が集まるが、こちらはまだそれほどでもない。じっくり見物するならこちらもおすすめである。

 さらに東進し、二本松市内で国道4号に合流する。ここらのR4はずっと4車線区間が続き、スピードも交通量も文字通りR459とは桁違いである。これも1桁国道の風格というものか、といっているうちゴージャスな作りの羽石ICで再びR459は西へと分岐していく。

 R4を離れた後は結構な急坂を登っていく。地味な道であったR459はここから突然観光地連発モードに突入する。まず一発目は岳温泉。こう書いて「だけおんせん」と読ませる。知らないとちょっと読めない。


国道から入っていく坂が温泉街になっている。登り切った先にR459の旧道らしき道がある。

 筆者もこの岳温泉に入ったことがあるが、傷なんかがあるとぴりぴりと湯がしみる。それもそのはずこの温泉のpHは2.48、早い話が希塩酸に浸かっているようなもんである。しかしこの湯が切り傷、火傷、胃腸病、神経痛に効能があるというから世の中わからない。通の人にも評判はよいようで、交通も便利だから温泉好きの人は訪ねてみるのも一興である。

 ということで 安達太良高原をバリバリと駆け上り、さらに標高が上がる。東西に広い福島県は浜通り、中通り、会津の3地方に大きく分けられるのだが、この土湯峠はその中通りと会津を分ける峠である。峠のちょうど頂上でR115と合流し、そこにドンと構えるのが「道の駅つちゆ」である。「土湯」というからには温泉もあるのかと思ったが、期待はもろくも裏切られた。


道の駅つちゆ。霧に包まれてなければ眺望もなかなかのもんなのだが。

 標高の高い峠にはありがちなことだが、ここも霧や強風などの気象変化に出会いやすい場所である。筆者も一度ここで車を降りようとした瞬間突風にドアを持って行かれ、ちょうつがい部分が「メキッ」という異音を発して曲がり、以来愛車アルデオ号のドアの立て付けは若干悪くなった。人や車が近くにいなかったのが不幸中の幸いではあった。


こういうのを見ると買って食わずにはいられない筆者。

 この後の土湯峠道路というのはトンネルと長大橋で一直線に山並みをぶち抜いた凄い道路で、このおかげで会津〜中通り間は冬も交通が確保できるようになった。今の風潮では道路建設というのは何であろうとデフォルトで「悪」と見なされがちだが、どうしても必要な道路もやはりある。苦難を乗り越え、求められるものを現実に造り上げてのける技術者たちの実力にも拍手を送りたい。

 土湯峠を下り切った後R115は猪苗代方面へ南下してしまうが、R459は再び分離独立して今度は五色沼方面へ向かう。この一帯は福島県、というより東北でも屈指のリゾート地で、特に夏から秋は観光客が引きも切らない。国立公園に指定されているためか店の看板なんかは茶色っぽい色に規制されているらしく、GSやコンビニなど違和感があって逆に目を引いてしまう。まあいかにもお役人が机の上で考えた規則という感じである。


何も標識まで茶色くするこたあねえだろ。

 この後に控える五色沼、秋元湖、檜原湖などは1888年の磐梯山噴火によって川の水がせき止められてできた湖で、秋は紅葉の名所、冬はスキーのメッカとして知られる。手元のガイドブックでは中畑清(福島出身・元巨人)がインタビューに対し「福島の観光地なら五色沼がおすすめだね。自殺の名所だけど、死んでる場合じゃないくらい紅葉がきれいなところなんだ」と答えており、相変わらずの素敵なバカさ加減に感心させられる。


国道沿い、木々の間から垣間見える檜原湖。俺ってもしかして写真撮るのうまい?

 というわけでこの近辺は磐梯吾妻レークライン、磐梯ゴールドラインなど観光有料道路が数多く存在している。実はこの辺のR459も元はこうした有料道路のひとつで、無料になった今でも料金所跡に看板だけが残っていて一瞬驚いたりする。


ちゃんと外しとけっつーに。

 とはいえ風景は高原の風情で非常に美しい。この後も湖の景観が売り物の「道の駅裏磐梯ビューパーク」、日帰り温泉「ラビスパ裏磐梯」と揃っており、ドライブコースとして申し分なしである。

 と、ここまでが一般人におすすめできる国道459号の表の顔。マニアにおすすめの「裏の顔」は、この後喜多方市内から始まるのである。これ以降はパート2で。

 

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