国道317号線を行く・その1

 さて今回はこのコーナー初の西日本進出である。わざわざ遠くまで足を伸ばすからには、やはり関東近辺にはないテイストの国道を選びたいではないか、そうだろう諸君。というわけで今回筆者がバチンとセレクトしたのは国道317号、日本でも数少ない海を渡る国道である。

 R317は広島県尾道市から愛媛県松山市までを結ぶ。といえばおわかりであろう、3本ある本四架橋の一つ、一般に「しまなみ海道」と呼ばれているアレである。一見高速道路みたいであるが、法律的には一般国道317号の有料バイパスという扱いであり、建設・管理を本州四国連絡橋公団が受け持つという形になっているわけである。この本四公団が腰が抜けるほどの赤字を背負い込んだ問題公団なわけであるが、それはまた後々触れることにしよう。

 というわけで今回は本州側、尾道の起点から攻略を開始する。尾道といえば「坂の町」「名刹の町」であり、ラーメンや魚もおいしいことで知られる有名な観光地である。筆者もせっかくなのでひとつ観光でもぶちかまそうとあちこち見て回ったが、カーナビのろくでもない案内によってびっくりするくらいの細い急坂に叩き込まれ、半泣きの目を見ることとなった。まあ確かに風景はよいところだが、大林宣彦監督のスタッフはえらい苦労をしてるに違いない。


山上にある千光寺から見下ろす尾道市街と向島。

 で、本題のR317であるが、高速道路並みの規格を持つR2尾道バイパスから分岐して始まる。


起点・西瀬戸尾道IC入り口。白い高架の道がR2尾道バイパス。

 まず一発目、本土から向島(むかいしま)を結ぶ新尾道大橋を渡る。このしまなみ海道が他の2つの本四架橋と大きく違うのは、他2つが一直線に橋と高速道路で海を踏み越えていってしまうのに対し、しまなみは義経の八艘飛びのようにあちこちの島をジグザグに伝ってゆき、いくつかの島では必ず「したみち」に降り立たねばならないという点にある。そのため移動時間という点では劣るものの、島の雰囲気を味わってゆっくり走れるからドライブの楽しさという面ではしまなみの圧勝である。この向島は「高速」で通過できる島なのであるが、ここはやはりしたみちに降り立ってみるのが国道野郎の心得というものであろう。


向島より新尾道大橋を望む。

 といっても向島は普通に走っている分には本土と何の違いも感じられない。まあだいたいこの島は本土と100m程度の狭い海峡をへだてて向かい合っているだけの島なので、感覚的にもほとんど離島という感じはない。コンビニもあればファッションセンターしまむらもあり、選挙カーも走っていればモーニング娘。のポスターも貼ってあるといった案配である。もちろん海岸沿いに走れば、船の姿や潮の香りがそれなりの風情を感じさせてはくれる。


向島の風景。川のように見えるのは海峡で、対岸は本土の尾道市。

 ちなみに「したみち」のR317としまなみ海道の関係を解説しておくと、両者は必ずしもイコールではない。したみちR317のような海を渡る国道では、フェリーも道路と同様路線の一部として国道に組み込まれることになっており、従ってしたみちR317は各島のフェリーの着く港から港を結んで走っている。高架のしまなみ海道はこれと独立して島々を結び、ところどころインターチェンジでしたみちR317に接続する、という形をとるわけである。


向島島内を走るしたみちR317の様子。背後に船と港が見える。

 というわけでネクストバッターは因島(いんのしま)である。因島といえば古くは因島水軍、最近ではポルノグラフィティの出身地として有名なところである。島内にはまだ「祝 ポルノグラフィティ紅白出場」なんて垂れ幕がかかっていて思わず笑ってしまった。


因島大橋。歩行者・自転車道がついているのも、しまなみ海道の大きな特徴である。

がしかし、因島といえば筆者的にはなんといっても本因坊秀策である。この人は幕末の棋士(碁打ちですね)で、将軍御前試合である「御城碁」で19戦全勝の大記録を残し、囲碁史上最強の名をほしいままにする人物である。最近では人気マンガ「ヒカルの碁」にも主要な役回りで登場し、子供たちの間でも名前を知られる存在となった。で、この秀策の生家が因島に今でも残されているということで訪ねてみたのである。

 目立たない看板を頼りにたどり着いてみるとそこにあったのは秀策の石碑。小さな神社の境内にあり、地味ながらなかなかきれいに管理されている。


書は大正時代の名人・本因坊秀哉。決してすごくうまい字というわけでもないような。

 神社は別に秀策を祀ってあるわけでもないようだったが、ついでに碁の実力アップを願ってお参りしておく。奥には「本因坊秀策記念館」というのもあったが、名前に反してほとんどただの民家であり、しかもGWのさなかでありながら定休日というやる気のなさ。わざわざ離島まで足を運んだ囲碁ファンの純粋な気持ちを踏みにじって余りある仕打ちである。しかし秀策先生もせっかくブレイクしたわけであるから、「道の駅 棋聖の里因島(仮名)」くらいのものを建てて、地元の偉人としてアピールしてみてもバチは当たらないと思うのだがどうだろうか。


本文とは関係ないが、広島県内の補助標識はもみじマーク入り。おしゃれさんですね。

 さらにもう一発橋を渡り、今度は生口島である。対岸の因島までの距離はせいぜい200m、さっき入った因島のコンビニが海の向こうに見えているというのはなんだか不思議な感じがする。

ここは温暖な気候と日当たりのよい斜面を利して柑橘類の栽培が盛んなところであり、道ばたでもずいぶんたくさん直売の屋台が出ている。筆者も「デコポン」という、文字通りヘタのところが出ベソのようにぽっこりと飛び出しているミカンを買ってみたが、とれたてということもあってなかなかうまいものであった。

 ところでこの島の西側には、「瓢箪島」という名前の小島が浮かんでいる。実物を見ればなるほど横から見たひょうたんそのもの。NHKドラマ「ひょっこりひょうたん島」の発想のもとになった島なんだそうである。


ネッシーの背中みたいな黒い小島が「瓢箪島」。

 ところが面白いことに、人も住めないようなこの小島が、どういうわけか広島県と愛媛県に分かれているのである。なんと江戸時代からこの分断状態は続いているそうであるが、何でまたこんなことになったのかは未だはっきりしていないらしい。瀬戸内海には他にもいくつか県境線の引かれている小島があるので、詳細な日本地図とヒマと興味のある方は調べてみると面白い。

 次の大三島からは愛媛県に入る。これ以降はパート2で。

 ドライブのページ

 HOMEに戻る