円や球体などと並び、らせん形というのも自然の中によく現れてくる形です。天然から見つかる基本的な分子にも、DNA・タンパクのα-ヘリックス・アミロースなどを初めとして多くのらせん状分子が見つかってきています。
人工分子でもらせん形をとるものが知られています。フランスのHucらが合成したアミド結合をたくさん含む上のような分子は、溶液の中でくるりと水の分子を巻き込んで、自発的にらせん状にまとまることがわかりました。この分子にHucらが与えた名前は「Molecular Apple Peels」(リンゴの皮分子)だそうです。らせん状にむいたリンゴの皮に見立てての命名で、水分子がリンゴの芯に当たるのでしょう。
もっと大きな分子を取り込んだり、特定の分子だけを見分けたりするらせん分子の開発、あるいはキラルな分子を取り込ませてらせんの右回り・左回りを制御するなど、展開はいろいろ考えられそうです。今後が楽しみな研究です。
Angew. Chem. Int. Ed. 44, 1954 (2005) I.Huc et al.