Molecule of the Week (7)

水色が炭素、紫色が窒素、紺色が銅、白が水素

 道路標識や新幹線の車体にはよく青色が用いられています。なぜ青が使われるかといえば、色合いの美しさ、視認性の高さなどに加え、屋外でも色落ちしにくい優れた青色顔料が存在しているからです。その顔料が上図のフタロシアニンブルーで、構成する57個の原子が全て一平面上に乗った、完璧な正方形の美しい分子です。

 フタロシアニンは1928年にイギリスの染料会社で偶然に発見された化合物です。フタル酸とアンモニアからフタルイミドを合成するプラントで、たまたま容器の鉄が反応して青い結晶が析出していたのを化学者ダンドリッジが発見したのです。彼はこの結晶に興味を持って研究を行い、鉄の代わりに銅を用いることによって優れた青色顔料を作り出せることを見つけたのです。

 フタロシアニンブルーは安価に合成でき、発色も鮮やかで、日光に強いなど多くの長所を併せ持つため、印刷インクや絵の具、衣服の染色などに広く用いられます。まさに「究極の青」というべき化合物ですが、もしダンドリッジが偶然に出来た不思議な青い粉に興味を持つことがなければ、文明を支える鮮やかな青は生まれていなかった――のかもしれません。

 

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