Molecule of the Week (3)

 直径わずか100億分の7mのフラーレンに穴を開け、水素分子を詰め込んでまた元のように穴を閉じる、という離れ業が実現しました。これをやってのけたのは、京大・小松紘一教授のグループです。3段階の反応でフラーレンに13員環の穴を切り開き、高圧の水素ガスを作用させると100%の収率で水素分子が取り込まれます。ここに再び4段階の反応を行い、中に水素分子を残したままフラーレン骨格を再生することに成功したのです(9%ほど中身の水素が逃げ出しますが、これはHPLCで分離できました)。

 フラーレンをアーク放電などで合成する際に他の金属などを共存させておくと、一部その金属原子が取り込まれたものが生成しますが、この効率は0.1%以下と極めて低いものでした。すでに出来上がったC60骨格に、有機化学的な手法によって後から他の分子を閉じ込めたのはこれが初めてのことになります。

 他の分子を内包したフラーレンは元と違った様々な面白い性質を示します。この「分子手術」は今までの物理的手法では得られなかったタイプの内包フラーレンを効率よく作る方法を開拓したものであり、フラーレン化学に大きな新しい可能性を切り開いた研究といえるでしょう。

 Science 307, 238 (2005) K.Komatsu et al.

 

 関連項目:フラーレンの新世界

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