国道410号線を行く

 みなさんが国道といって思い浮かべるものはどのような道だろうか。まあたいていの人は上下4車線あって歩道があって並木道があって商店が並んでいて、というような立派な道路を想像されるのではないだろうか。

 が、世の中そうでない酷道も存在する。センターラインがないくらいはいい方で、中には対向ができないとか、舗装されてないとか、雨が降ると水没するとかいうものまである。そういうヘボ国道もまたフリークの目からは興味深いものだ。

 そんな「濃い」国道はどこらへんに分布するかというと、当然ながら中部地方や紀伊半島の山岳地帯に集中している。日本最大の平野が広がる関東地方では道路の整備が進んでおり、そうメタメタな道はないように見える。R299やR405などの峠部分はかなりきついところもあるが、これらはいずれも関東から中部の山地へと抜ける道である。純粋に関東地方の道でありながら、国道フリークの魂を熱く揺さぶる、ワイルドでソウルフルな荒ぶるヘボ国道というのはどこにもないのだろうか。

 ある。今回紹介する国道410号線がそれだ。


 国道410号線は千葉県館山市の内房側、館山湾付近に端を発し、房総半島最南端をくるりと半周した後内陸部を北上し、最後は木更津市でR16にぶつかって終わる、全長105kmの国道である。今回の調査では法令で定められたのとは逆に木更津市を出発し、南下する形で走行した。従って文中のスタートとゴールは実際とは逆であるが、便宜上お許し願いたい。  

 さて出発地点はここ。木更津市内のR16から分岐してR410は始まる。


背後には高架4車線の立派なR16が通っているが、こちらはしょぼい裏道。

 スタートしてしばらく行くと最近できたバイパスに入る。この間はR410はひとつ番号の若いR409との重複区間で、標識もR409のものばかりである。R409は東京湾横断道路(アクアライン)を含む道であり、当然ながらこの付近の道は真新しく、そらぞらしいまでに綺麗で周囲の光景から完全に浮き上がっている。しかし交通量の方は拍子抜けするくらい少なく、何のためにあんなとんでもない道路を作ったんだかなあという気にさせられる。

 しかしそのこぎれいな道も数キロだけのことで、しばらくすると2車線ぎりぎりの狭い道に成り下がる。やがて袖ヶ浦市高谷の交差点でR410はR409に別れを告げ、単独区間として南下を始める。


 正面がR409、右折するとR410。まあ400番台の国道ならこんなもんか、という道である。このへんは。

 R410の前半は小櫃川およびJR久留里線と並走する形で野を越え山を越えてゆく。ときどき小さな町が現れるものの、基本的に山と畑の典型的な田舎の風景である。沿線にはゴルフ場が多く、やたらと「××カントリークラブあと◯km」の看板が目につく。道はうねってはいるものの標高はさほど上がらず、いわゆる山道という感じはしない。


 天空の城久留里。すごいぞ久留里。

 久留里の小さな商店街を抜け、上総松丘駅付近で意味不明の青看が登場する。これが異変の序曲。


トンネル地帯手前にある青看。なんのこっちゃ、という表示である。一般市民は右に、物好きとマニアのみ直進するのが正解。

で、短いトンネルを4つばかり抜けたところで問題の地点にさしかかる。地図で見るとこのあたりのR410はまるで酔っぱらいの千鳥足のようなヨレヨレのコースどりである。


 上総松丘名物サギカーブ。

 こんなもんどう考えたって百人中百人が直進するに決まっていると思うのだが、そっちは不正解(直進はR465)。本物のR410は写真左のカーブミラーがあるあたりから鋭角的に曲がって坂を登っていくのである。ご覧の通り標識や看板は何もなし。サギもはなはだしい。

 で、この坂を登るととても国道とは思えない怪しげなトンネルが待っている。ライトも何もなし。大丈夫かおい、と思わずつぶやく。


 言っておくが国道である。

 で、このトンネルを抜けると狭い橋がある。ここは完全に車1台の幅しかない。うわあ今は対向車来るなよ、と思っていたら来やがった。しかも御丁寧にエスティマとBMW。これは負けである。下がる他ない。できる限りバックして右に寄せ、ダートに後輪を落とす。かくして洗車したての愛車アルデオ号は泥だらけと相成ったのであった。


 2台をやり過ごした後、車内からパチリ。なんつー道だ。

 この道、どうなっているかというとさっき来た道(3枚上の写真)を逆「の」の字形に乗り越えて行っているのである。しかも腹が立つことに、こんなところを通らなくても、もっと手前の駅付近からの脇道に入ればあっさりとショートカットできるのだ(4枚上の写真参照)。一体なぜこんな道が国道に指定されたのやら、全く謎である。

 この橋を越えた後も狭い道は続く。しばらくの間は「道幅狭し」と「落石注意」の標識が道端を飾る。


 ケンカ売ってんのかコラ。しつこいようだが国道である。

 このあたりの地元車を見るとたいてい軽である。まあこれだけ狭い道の続く場所だからこれは当然の選択であろう。と思っているとときどき派手なセリカやらイタ車やらが必死に左右に気を配りながら走ってくる。たぶん峠を攻めたついでにアクアラインにでも行って来っかという連中であろう。地図で国道と見て安心してやってきて「なんじゃこりゃあ」と驚いているのに違いない。ざまあ見やがれである(特に恨みはないのだが)。

 この後R465との交差点を過ぎると、小糸川をせき止めてできた三島ダム、豊英ダムが現れる。この辺は清和県民の森というレジャー施設になっている。


 三島湖。釣り人がたむろしている。風光明媚。

 このあたりには「小学校あり」の看板が異常な密度で林立していた。よほど子供がひかれるのであろう。注意しながらカーブを曲がる。これ以降は道は2車線に整備されており、ずいぶん走りやすくなっている。


 タヌキだ。ははは。気ぃつけます。ちなみに富津館山道路にはサルバージョンがあった。

 君鴨トンネルを抜けて鴨川市に突入。ここの旧道は凄まじいものであったらしいが、現在は残念ながら(?)封鎖されていて入ることはできないようになっている。


 君鴨トンネル。1993年開通だそうである。

 この一帯は筆者の手元の古い地図(マップル94年版)では「このあたりは悪路で国道標識はない」という但し書きがついている。それが今やこれだから、なかなかの進歩である。この後長狭街道(千葉県道34号)を過ぎたあたりで道が狭くなるが、ここも拡幅工事の最中であった。ごくろうさま。

 丸山町に突入。ここは何のためか知らないが風車がところどころに並んでいる。


 菜の花がきれい。しかし回っている風車は一つもなかったが、一体何のために建てたのか。

 さらに南下を続け、R128とクロスしてようやく外房の海辺に達する。


 千倉町の海岸。春の房総の海はひねもすのたりと波打っていた。

 この後は房総半島最南端を海沿いに半周することになる。このあたりは房総フラワーラインと呼ばれ、花畑を横目に見ながら走る有名なドライブコースである。春のこの季節は色とりどりの花が実に美しく、一見の価値ありである。


 ホントこのへんはおすすめですよ、ダンナ。

 あとはとりたてていうこともない。左に海、右に花を眺めながら(わき見運転はやめましょう)走って行けば、やがて道は館山市街に入ってゆき、北条の交差点でR128とぶつかってR410は終わりを告げる。どうということのないヘボい交差点だが、まあR410のエンディングにはふさわしいのかも知れない(追記:現在付近に新しい道ができつつあり、将来的にはこのちょっと東にR127・128・410の終点が移りそうだとのことである)。


 着いたころにはすっかり夜。右方向がR128、正面は旧R127(現r302)。

 というわけでR410全105kmを走り切った感想は、「あれえっ、走れるじゃん」であった。実は筆者は97年ころにもこの道を走っているのだが、その時には君津市内の道路状況はまだひどく、「てめえふざけるなこの野郎」的なポイント満載であった。本文中でも触れた通り、地図によれば94年ころの状況はさらに劣悪でほぼ林道同然であったと思われ、急速な改善が進んでいることをうかがわせる。あのヘボ道路がこうまで化けるとは、国家権力の力たるや恐るべしという他ない。アクアラインの周辺整備という意味もあるのであろう。後は上総松丘駅付近の意味不明の大ボケ大迂回さえなんとかすれば、関東最弱酷道の名も返上できそうであるが(となればその名を受け継ぐのはR465あたりだろうか)、あれくらいは残しておいてもいいかなという気もしないではないのだった。

 全体として、メリハリのきいた個性的な面白い道といえると思う。みなさんも一度訪れてみてはいかが。

 

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