国道293号線を行く・その2
というわけで続き。氏家の市街地を抜け、喜連川町に入ったところで道の駅が登場する。ここは2001年オープンと新しい道の駅だが、非常に広くて土産物なども充実しており、安い温泉などもあるのでおすすめの存在である。

一山越すとそこは小川町。R293は山なりのカーブで足利と日立を結んでいるのだが、その山のてっぺんにあたるのがこのへんである。ここは旧道とバイパス2本に道が分裂する。ここでは南側のバイパスを選択。田んぼの中を一直線にぶち抜く広い道で、特に若鮎大橋では幅も広く見通しもよく快適に飛ばせる道となっている(追記:最近旧道は県道へと降格した模様である)。

那珂川を越えるとそこは馬頭町。なかなかインパクトのある地名だが、馬頭観世音があったことからきているらしい。これが栃木県最後の町になる。

ここにも3連だんごが存在する。鹿沼のとは違って、三男だけ顔が似ていない。ちなみにこの400号というのは法律上水戸市が起点なのだけど、R118、293、294と主を乗り換えて、70km先の栃木県湯津上村でようやく姿を現すなかなか不憫な国道である。この付近ではなぜか栃木県道52号線が優先的に表示されているところもあって、不憫さをいっそうあらわにしている。

道の駅ばとうで再び一息。R293沿線には前述のきつれがわ、みわなどが増えて、ドライブの休憩ポイントとしてなかなか役に立つ存在である。ここらも温泉が近いので、できれば温泉があるとさらにナイスであるのだが。

ここから走り出すとしばらくしてまた峠道が始まる。茨城県境手前の伴睦峠(ばんぼくとうげ)は標高300m、この道の最高地点である。なんか変わった名前の峠だなと思っていたら、昭和30年代にこの道の整備に力を尽くした、当時の自民党副総裁大野伴睦氏の名に因むそうである。やや政治的な香りのするネーミングではある。

ここから坂を下ることしばし、茨城県境に到着。茨城と栃木を結ぶ道はずいぶんたくさんあるのだけれど、走って快適なのはR293にとどめを刺す。筆者が上の写真を撮影している間にもインプレッサとアルテッツァが猛スピードで駆け抜けていった。峠の走り屋には物足りないかもしれないけど、適度なワインディングで交通量も少なく、筆者あたりにはちょうどよろしい。

県境の美和村。この北の山は鷲子(とりのこ)山といって、1300年の歴史を持つ神社がある。行ったことはないが、なかなか霊験あらたかそうである。
美和村を過ぎ、花立峠を越えるとそこは緒川村。村にはたくさんの風車が回っており、物産店の名前も「かざぐるま」。なんのこっちゃと思っていたら、なんと風車の弥七の墓があるのだそうである。実在の人物だったんか弥七って。
大宮町に入って白石峠を越えると、それまでの山道から平野に入ってくる。R293は関東平野の北端をなぞるように走ると書いたがこの辺はまさにそれであり、田んぼと小山を道が分けている。なかなか印象的な地形だ。

ここまで快走路が続いてきたが、R293も残り十数キロとなったところで難関が訪れる。市街地の中心を通る道路から、突然脇道の妙な狭い坂道に入り込んでゆくのだ。何かの間違いかと思ってしまうが、ちゃんとおにぎりが立っている。非常にわかりにくいポイントだ。

この坂を登り切った後、さらに狭い道を左、右に曲がる。このあたりは一体どの道が国道なのか、地図によって書いてあることが食い違っていて混乱を来たしている。調査の結果、どうやら下の写真にある一方通行の商店街の道が正解のようだ。こんなことにこだわる奴はあまりいないと思われているのか、案内もほとんどない。

察するにこの道は昔の街道がそのまま国道指定されて残っているのだろう。現在、手前の金砂郷町から市街地を迂回する形のバイパスが建設中であるので、完成の暁にはおそらく旧道として国道から降格されることになると思われる。こうした旧街道そのままの国道はバイパスの整備とともに姿を消しつつあるので、ある意味では貴重な存在といえるかもしれない。
あとは淡々と走るだけ。日立市に入ってR6と交差し、日立港付近のR245との交点でR293は終了する。スタートのころのほこりっぽい空気は、潮の香りのする春風に変わっていた。

ということで全線を走り切った。距離のわりに大した都会も通らず地味ではあるけれど、それなりに変化のある味わい深い道と思う。R294なんかに比べると全体に整備が行き届いていて、気分よく走れるところもまたよい。特別観光名所があるわけではないけれど、ふと気が向いてなんとなくどこかをドライブしてみたい、そんな気分の時走ってみるのに向いた道ではないかと思う。みなさんも訪れてみてはいかが。