国道121号線を行く〜その3〜

 ということでR121ツアーは「一体何ヶ月かかってんだよ」という罵声をかわしつつ、ようやっと最終章へ突入する。残るは福島北部から山形県部分、メインイベントとなるのは県境にそびえる大峠となる。

 会津若松中心部を通り抜けたR121は広いバイパスとなり、広々とした田畑の中を北へ向かう。このあたりの、穏やかな気分にさせてくれる会津の風景が筆者はとても好きだ。ここらで車を止めて、そこらの川べりで2時間くらいぼへーっとしていると、日頃のストレスも吹き飛んでくれるというものである。


塩川町内。広い空、広い大地。うーんいいなあ。

 と、どうやらここにも「地域高規格道路」とかいうものの建設予定があるらしい。とはいうものの交通量から言っても現状のR121でどう見ても十分。せっかくの会津の自然を壊してまで大がかりな道路を作る必要はさらさらないと思われる。


いかにも無駄遣いで終わりそうな会津縦貫北道路計画。

 そうこうしているうちに道は喜多方市内へと突入する。喜多方は言うまでもなく蔵とラーメンの街。とはいえ現在のR121は市街地からやや外れたところをバイパスしており、バカ正直に国道だけを走っていると、あれれ?ラーメン屋なんてどこにあったの?ということになる(そんなやつは筆者だけか)。ラーメンが食べたければ西側の市街地へ入っていく必要がある。


蔵の形のラーメン屋。実にわかりやすく喜多方を主張している。うまいかどうかは未確認。

 ラーメンどころ喜多方といえどもやはり当たり外れはあって、今のところ筆者は3勝3敗くらいである。わざわざ遠くまで行ってクソまずいラーメンを食わされるのは心底腹が立つので、行列を覚悟してでも「坂内」や「まこと」など有名店に行っとくのが無難、というのが筆者の結論である。

  さて、喜多方市の外れの方にあるのが道の駅「喜多の郷」。ここはかなり広く、露天風呂付きの温泉(¥500)まであるなかなかよい道の駅。この後に控える大峠道路に備えて、ここでゆっくり休憩をとっておくのも一興である。

 道の駅を出て右折してしばらくすると、突然県道333号の標識が現れてびっくりする。といっても道を間違えたわけではなく、今のところつながっていないR121を県道がとりあえずつないでいるのである。とはいってもこの県道部分も特にR121に遜色ない道で、標識さえなければ走っていて特に違和感はない。正式なR121も現在建設中であるが、別に県道333号をそのまま国道昇格させてしまって何の問題もなさそうなものである。


大小2段重ねのヘキサ(六角)標識は、福島県道に特有のタイプなのである。

 というわけでいよいよ大峠道路に突入。この道は1998年頃に開通した新しい道で、いわゆる峠道にありがちなくねくね、急坂路を想像して行くとこれが全然違う。県境に立ちはだかる山々をトンネルでぶち抜き、高い橋でつないでほぼ一直線、そこらの高速道路よりよほど走りやすい素晴らしい道路に仕上がっている。下の写真の撮影中にも黄色のS2000が猛スピードで駆け抜けていった。まだあまり知られていないが、なかなか紅葉もきれいなところなので筆者のおすすめである。


7つの橋と7つのトンネルが続く大峠道路、締めくくりはこの大峠トンネル。全長3940m。

 山形県と福島県はかなり長い県境線を持つのに、地勢が厳しいせいで両者をつなぐ道路は4本しかない。R13栗子峠、R121大峠、R399鳩峰峠、県道2号白布峠である。しかしこのうち鳩峰峠は冗談みたいにひどい道路だし(現在通行止)、白布峠は有料で冬期は閉鎖となる。R13も先年土砂崩れによりかなり長期間の通行止めとなった。してみると大峠道路というのは金をかけて整備するだけのことはある、なかなか偉大な存在ということになる。


 ここを過ぎれば後は米沢市内の終点まで駆け抜けるばかり……と言いたいところだが、実はこの大峠には旧道が存在する。この旧道は法律上はいまだに国道扱いをされているくせに、路面はズダボロ、もう3年以上も崖崩れで通行止めのまま放置されているという凄い道路である。はっきり言ってここに行かなければR121を語ったことにはならないのであるが、実は筆者ここへはあまり近寄りたくない。  

 3年ほど前、筆者は山形側から旧道を探検してみたことがある。入り口付近に車を置いて徒歩で入り込んだのだが、噂に違わずひどい路面で、あちこちに「転落注意」の立て看板が立っている。この看板はダテではなく、実際にガードレールをぶち破って車が落ちたらしい跡がそこここに残っていた。傍らを流れる川の谷底は恐ろしいほど深く、落ちたらまず助からんな、と思わせる。破れたガードレールは修復されてもおらず、そもそも人の気配はおろか、道路の他には遠くの送電線の鉄塔以外に人工物らしいものが一切ない。日本にもこんなところがまだあったのか、と思うくらいのとてつもない山奥なのである。


強烈なさびれ具合の大峠旧道。路面に小川が流れてたりするところも。

 入り口から3kmくらい入り込んだところで、ふとこんなところに入ってくるやつは死体でも埋めに来るやつだけだな、という考えが脳裏をよぎった。瞬間、急に恐怖が沸き上がってきた。車ごと転落した人々の無念の霊が谷底から呼んでいる気がし、妙な冷汗が流れ出した。首筋の毛がちりちりと逆立つ。生まれて初めて味わう感覚だった。やばい、ここらで引き返そう、と思ったその瞬間だった。

 崖崩れで通行止めになっているはずの福島側から、一台の白いセダンが悪路をものともせず突っ走ってきたのだ。驚いて脇に飛びのいてよけたが、運転手はこんな山奥を一人で歩いている男に目もくれず猛スピードで走り去った。まさか本当に死体を埋めに来たんじゃ……?だとしたら目撃者を消すためにあの運転手がまた戻って来はしないか……?サスペンスドラマ的な妄想が沸き上がり、一人で狼狽したことを覚えている(こう書くとアホみたいだが、誰だってあの状況に置かれればそう思うに違いない)。

 幸いにも男は戻ってくることもなく、筆者は無事もとの地点に戻ることができた。それからしばらくはここに来ることもなかったのだが、一年ほどして再び大峠を通過する機会があった。と、あちこちに少年の写真入りの立て看板が立てられていた。近寄ってよく見ると、「行方不明の少年を探して下さい」……。まさかあの時のあれじゃないんだよなあ、と再び背筋が寒くなった。

 以上、全て実話である(ただし看板をよく見てみたら、少年が行方不明になったのは、筆者が旧道を訪れた後のことだったけれど)。とはいえ、霊感の強い友人を連れてきた時も、上の体験談は話していなかったのに「あそこには強力な霊の気配がしましたよ」と言っていたことだし、やっぱり何かが「いる」のは間違いなさそうだ。いろんな意味で危険なところなのである。

 というわけで、筆者は大峠旧道には二度と近寄りたくない。もしも恐いもの見たさで行ってみたいという方があれば、こちらのページが詳しいので参考にしていただきたい。いまだに細々と整備が進められているようであるから、送電線のメンテナンスくらいには使われているのかもしれない。


 ということで本線に戻る。大峠を降り切ったところには道の駅たざわ(玉こんにゃくが名物)があり、これ以降はだんだん民家も増えてくる。広い道路を快適に走るうち、米沢市街地手前でR121は再び2本に分裂する。北へ向かうのはこれも最近できた米沢バイパスで、沿道には徐々に大型店舗が増えつつある。  

開放的な雰囲気の米沢BP。新興住宅地ができつつあるようだ。

 本線の方は米沢の旧市街地を通り、やがてR13に接続してR121は終了する。3ケタ国道の常で、長い旅の最後を飾るにはあまりにそっけない交差点だ。走り終えた記念に名物の牛肉をパクつくのもよし、喜多方とラーメンの食べ比べをしてみるのも悪くはない。


どってことはない交差点だが、全線を走り抜けた筆者の目にはそれなりに感慨深く見えるのだ。

 というわけで全線を走破した。大都市の目抜き通り、歴史ある並木道、郊外のゆったりしたバイパス、大規模な峠越え、そして強烈な悪路。これだけ豊かな内容がある国道というのも珍しい。もちろん温泉もうまいものもそろっているし、全線にわたって実に走りやすい(大峠旧道を除いて)。みちのくの雄大な風景を眺めながら爽快にすっ飛ばせば、都会のセコセコした道路を渋滞に悩まされながら走る気は二度と起こらなくなるというものである。いっちょ国道走破というもんをやってみるか、という方には大変おすすめの一本だ。特に大峠道路の爽快さは、ぜひ一度みなさんにも味わっていただきたいと思う次第である。

 

 ドライブのページ

 HOMEに戻る