Molecule of the Week (4)

 陽イオンと陰イオンからなる化合物、塩(えん)はたいていの場合固体ですが、アンモニウム塩などの一部には室温でも液体の塩が存在します。こうした「イオン性液体」が最近注目を集めています。

 イオン性液体はほとんど蒸発せず、高い電気伝導性を持ち、300度といった高温でも分解しません。また置換基や陰イオン部分の選び方によっては水にも有機溶媒にも溶けないものになります。この性質を利用し、何度でも再利用できる反応溶媒として環境にやさしい反応(グリーンケミストリー)への展開が期待されています。

 またこのイオン性液体をカーボンナノチューブとこね合わせることにより、非常に丈夫で、電気を通すことのできるプラスチックが作れるといった報告もなされています(Science 300, 2072 (2003))。また陰イオンを塩化鉄(III)酸(FeCl4-)に変えることで、磁石にくっつく液体が作れるという面白い研究もあり、いろいろ応用が考えられそうです。次に何が登場するか、非常に期待の持てる分野といえるでしょう。

 

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