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 2008年 第42号 もくじ

1.今週の反応・試薬 2.注目の論文 3.安全な実験のために 4.館長の本棚 5.編集後記
有機化学美術館更新情報: 


 ☆今週の反応・試薬

 ・エトキシカルボニルフタルイミド

 フタロイル基はヒドラジン・メチルアミンなどで切断可能な優れた保護基だが、導入の際に強い条件を必要とすることがある。この試薬は穏和な条件下一級アミンのみを選択的にフタロイル化するため、使いやすい。

 ※カルボキシ基や水酸基がフリーのままでも使用可能なので、塩化フタロイルやフタル酸無水物などでうまくいかないときにも使えます。覚えておくとちょっと便利な試薬です。


 ☆注目の論文

・反応

Cavity-Tailored, Self-Sorting Supramolecular Catalytic Boxes for Selective Oxidation
Suk Joong Lee, So-Hye Cho, Karen L. Mulfort, David M. Tiede, Joseph T. Hupp and SonBinh T. Nguyen
J. Am. Chem. Soc. ASAP DOI:10.1021/ja804014y

 ポルフィリンをベースにした箱状の錯体を触媒として使って、選択的な酸化反応を行う研究。今のところ選択性の数字はまだまだですが、未来を感じさせる研究です。

Intermolecular Cope-Type Hydroamination of Alkenes and Alkynes using Hydroxylamines
Joseph Moran, Serge I. Gorelsky, Elena Dimitrijevic, Marie-Eve Lebrun, Anne-Catherine Bédard, Catherine Séguin and André M. Beauchemin
J. Am. Chem. Soc. ASAP DOI:10.1021/ja806300r

 単純なアルケン・アルキンが封管中でヒドロキシルアミンと反応し、Markovnikov型に付加して対応するN-アルキルヒドロキシルアミン・オキシムを与える。こんなシンプルな条件が見つかってなかったのかと思いますが、応用範囲も広くかなり使えそうです。

Heterolytic dihydrogen activation with the 1,8-bis(diphenylphosphino)naphthalene/B(C6F5)3 pair and its application for metal-free catalytic hydrogenation of silyl enol ethers
Huadong Wang, Roland Fröhlich, Gerald Kehr and Gerhard Erker
Chem. Commun., 2008, 5966 - 5968, DOI: 10.1039/b813286k

 以前も紹介した「Frustrated Lewis Pair」による水素分子の活性化・切断反応の応用。ホスフィン側をプロトンスポンジ型の構造にしてホウ素との錯形成を防ぎ、穏和な条件で水素を活性化してオレフィンの還元に成功。

・全合成

Total Syntheses of (-)-Agelastatin A
Takehiko Yoshimitsu, Tatsunori Ino and Tetsuaki Tanaka
Org. Lett., 2008, 10 (23), pp 5457–5460 DOI: 10.1021/ol802225g

 海綿の作るアルカロイドAgelastatinの全合成。変に難しい有機金属試薬などを使わずとも、センス良く分子は組み立てられるのだという好例かと思います。

Enantioselective Synthesis of (+)-Cortistatin A, a Potent and Selective Inhibitor of Endothelial Cell Proliferation
Hong Myung Lee, Cristina Nieto-Oberhuber and Matthew D. Shair
J. Am. Chem. Soc. ASAP DOI10.1021/ja8071918

 血管新生阻害作用を持つ注目の天然物・コルチスタチンの全合成。カチオン転位を使った環拡大、アザPrins反応を使った骨格の一挙構築など見せ場も十分。

Total Synthesis of (−)-Serotobenine
Yasuaki Koizumi, Hideki Kobayashi, Toshiyuki Wakimoto, Takumi Furuta, Tohru Fukuyama and Toshiyuki Kan
J. Am. Chem. Soc. ASAP DOI:10.1021/ja807676v

 8員環ラクタムを含むインドールアルカロイドの合成。合成も手際よく決まっていますが、ラセミ化の機構の研究も面白いです。

※興味深い論文などありましたら、こちらより情報をお寄せいただければ幸いです。反応・全合成の他、医薬品合成・超分子・材料・天然物化学などなど何でも結構です。


 ☆安全な実験のために

 o-ニトロフェニルアセトアルデヒドを減圧蒸留していたところ、爆発が起こった。

 o-ニトロフェニルアセチルクロリドなど、o-置換のニトロ化合物は、いくつか減圧蒸留中に爆発を起こした事例があるそうです。ジニトロ以上だと恐いけど、モノニトロなら大丈夫――などと油断していると、危険は突然やって来ます。

(参考:有機化学実験の事故・危険―事例に学ぶ身の守り方 p.218より)

 ☆館長の本棚

 メタルカラーの時代〈13〉 100年後に残すメガ仕事  (山根一眞著 小学館 1680円)

 全国の技術者(メタルカラー)に山根氏がインタビューし、その創造の過程を聞き出して回るシリーズ。筆者はこの「メタルカラーの時代」が非常に好きなのですが、今回も凄い話が満載です。アクアラインから揚水発電所まで、日本の技術者ってのはこんなことまでやってのけるのか!と腰を抜かすような話がたくさん出てきます。日本人であることが誇りに思えると同時に、これだけの仕事をしている人たちに、日本社会はきちんと報いているのだろうか――という気もしてきますが。

 後半には、ノーベル賞確実といわれながら先年惜しくも亡くなった、戸塚洋二教授のインタビューも収録されています。カミオカンデ恐るべし、とうなること請け合いです。


 ☆編集後記

 サイエンスアゴラが無事終了しました。今年は去年の倍以上の来客があったそうで、非常な盛会であったようです。まあ実際あれだけいろいろな講演を聴けて出展を見られて無料ですから、客が入るのも当然でしょう。

 今回の講演では、演示実験に協力して下さった方、質問に答えて下さった方に分子模型ストラップをプレゼントしました。そうしたら終了後、「さっきのストラップはどんなのですか?どこに売ってますか?」と熱心に聞いてくる小学3年生くらいの子供がいました。「池袋のジュンク堂に売ってる」と教えてあげたんですが、余分に用意してきたらプレゼントできたのにな、とちょっと後悔。彼は将来立派な化学者になるかもしれません。

 こういうふれあいがあるのも、サイエンスアゴラというイベントの魅力です。観客として、発表者として、来年はみなさまもぜひお台場へおいで下さい。

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