☆登山道国道(R289・福島県西郷村)

 国道界屈指の名所・登山道国道が消える可能性があるとのことで、2008年7月に再訪して参りました。

 この登山道国道は、国道289号線(新潟県新潟市〜福島県いわき市)上、福島県西郷村にあります。白河からR289を西へ向かうと、やがて道は山にさしかかり、トンネルの連続する区間になります。このエリアが甲子峠(かしとうげ)で、R289は長らくここで不通となっていました。ここに道を通そうと工事が1975年から続いていましたが、途中大雨で地盤が崩壊してトンネルの掘り直しを余儀なくされるなど、苦難の道のりを辿っています。

 そのトンネル区間が終了したところで立派な道はいったん途切れ、深い谷底へ向かうことになります。ここに一軒ぽつんと出現するのが、温泉旅館「大黒屋」です。


提灯には「日本秘湯を守る会」の文字。

 この旅館の奥にある門らしきものをくぐると、一面緑の山々と清流の流れ落ちる小さなダムが見えてきます。


秘境へと続くゲート。

 そして坂を下ると、目を見張るポジションに国道標識が出現します。石ころの散らばる草っぱらと、川を渡る幅1m少々の小さな橋のたもとに、忽然とR289標識が現れるのです。つまり、この車どころかバイクでも恐ろしい小橋はれっきとした国道であるということになります。


えええええ?

 が、これはまだ前座。この橋を渡って細い山道を登ったところに、真打ちの登山道国道が出現するのです。今度は当然バイクでも無理というありえない小道に、国道標識が堂々と立っているのです。


あれは……もしや伝説の……!


究極ダメ国道ッ!!

 環境との調和に配慮して自然木に標識がくくりつけられているそうですが、そんなことではとうてい中和しきれない驚くべき違和感です。


そのうち枝葉が生えてくるんじゃないかという感すらあります。

 しかしなんでまたこんなところに――と誰もが思うところですが、どうやらこれは先ほどの大黒屋旅館が関係しているとのことです。かつて測量の際にミスが絡んでトラブルとなり、ここが国道であることを実証するために立てられたというのが真相であるようです。

 国道界では「触れると3年寿命が延びる」といわれるほどのこの名おにぎりですが、もしかするとあと数ヶ月の命かもしれません。2008年9月21日に、この峠をつなぐ「甲子道路」が33年目にして開通することに決定したからです。すでにこの谷を越える巨大な橋は完成しており、ようやく白河から奥会津へのルートが出来上がることになりそうです。その場合この大黒屋付近はもう国道扱いされなくなり、撤去される可能性もありそうです。見に行くなら今のうちでしょう。


登山道おにぎりをまたぎ超える「甲子大橋」。

 なおR289のもう一つの不通区間、福島〜新潟県境の「八十里越」も工事が行われていますが、こちらは豪雪と峻険な地形に阻まれ、まだあと10年以上はかかりそうな見通しです。我々が何気なく走り抜ける山道は、こうした凄まじい時間と努力の上に成り立っています。

 (追記)2008年9月21日、甲子道路開通の日にあっさりとこの名物おにぎりは引っこ抜かれ、撤去されたようです。こんなこととわかってたら助命嘆願のメールでも工事事務所に出しときゃよかったかなあ……別に維持費がかかるわけでもないのに、そんなに律儀に撤去しなくてもいいのにと思うのですが。
 撤去作業の様子がニコニコ動画にアップされていますので、見られる方はどうぞ。登山道おにぎりフォーエバー、君のことは忘れない。

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