国道294号線を行く・その2

 というわけでR294レポートその2。R294は栃木県北部を那珂川とともに北上してゆき、馬頭町、湯津上村、黒羽町あたりは温泉地帯でもある。面白いのは湯津上村で、民家や店の軒先に屋号の看板が出ている。話題作りのために村が各家に呼びかけて作成したものらしい。

村中にこれが下がっている。なかなかに風情あり。

 那須町のR294は改良がなされており、幅が広く信号も少ないので実に走りやすい。このあたりから道端にチェーン着脱場が現れる。もうみちのくは目の前である。

チェーン着脱場の片隅にある一里塚跡。このあたりはかつての陸羽街道で、奥州へのメインルートであった。

 那須町内の美しい風景の中をを快適に飛ばすこと十数キロ、ついに福島県境に到着。

この「うつくしま、ふくしま」のマーク入り看板は県内全域に置かれている。そんなにいばって言うほどのキャッチフレーズなのかという気はしないでもない。

 県境は森に包まれており、切り通しになった両側に小さな神社がある。関東と東北の境目でもあり、かつては関所も置かれていた要所である。千数百年の間、様々な思いを抱いて無数の旅人や兵士がここを通過したのだろう。そういう雰囲気を感じさせる場所である。

 さて県境の町白河市は陸羽街道の宿場町でもあり、三大関所の一つ白河の関も置かれていた東北の玄関口である。現在も東北新幹線、東北自動車道、R4、R289、R294が集まるなど交通の要衝としての地位を失っていない。また、ここは喜多方に比べても遜色のないラーメンの町でもある。筆者のおすすめはR289×R294付近の「大正(おおまさ)」の鉄鍋入り味噌ラーメンと、ショッピングセンター「メガステージ白河」内にある「ちゃあしゅう屋」のチャーシューメンである。

 そんな白河市内だが、R294ドライバーにとって決して走りやすくはない。市街地の細い道をあちらこちらと右往左往しながら抜けて行かねばならない。こういうくねくね道というのは、古い町独特のものである。

こういうちっこい青看があちこちにあり、見落とすとたちまちミスコース。まあ国道初段たる筆者にはこの程度のトラップは通用しない。

 白河市内を抜けると、あとはひたすら田舎道となる。田園風景の中を北東へ道は延びて行く。

天栄村のR118との重複区間。日本の田舎といった趣。

 とはいうものの見ての通りこの辺のR294は大変新しく、走りやすい道が続く。細い区間もあるが、あちこちで拡幅工事も行なわれていて、急速に改良が進んでいることをうかがわせる。

ヘルメットをかぶった謎のセクシーねーちゃん。モデル稼業もなかなか楽ではない。天栄村の工事現場にて。

福島県独特のガードレールにくっついたミニおにぎり。標識は県単位で管理しているので、よく観察していると県ごとにそれぞれ個性がある。

 ここまではわりに新しくきれいな道が続いて来たが、長沼町内に入ってR294は江花川沿いの細く頼りない道になる。林の中に入り込み、標高も上がり始めて秘境の趣を強くする。と、突然左手に滝が現れる。何か気温まで下がったように感じられる。

馬尾の滝。なるほど馬の尾のように見える。風情爆発。

 ここからR294は勢至堂峠、三王坂、黒森峠の3つの峠を越える難所に入る。まず勢至堂峠だが、ここはすでに道が改良されており、トンネルも掘られているので特に走りにくいことはない。ついでなので勢至堂集落内を走る細い旧道に入り込んでみたところ、まだ古い国道標識が残存していた。

集落内に残されたR294おにぎり。

 さらに登りつづけるとやがて民家は途切れ、だんだんと舗装も荒れてつる草が生い茂り始める。こりゃやばいかな、と思ったところでついに舗装が途切れ、もはや通れたものではないダートと化した。

かつて国道であったもののなれの果て。こうして道は自然に帰ってゆく。

 というわけでここで引き返し、本ルートに復帰。この後の勢至堂峠の頂上手前には現在はトンネルが掘られ、あっという間に通過できる。頂上を走る旧道も残っているが、取材時は梅雨の豪雨のころであったこともあり、これ以上踏み込むのは自粛した。

 峠を下り、いくつかの集落を過ぎた後、R294最大の難所である黒森峠にさしかかる。ヘアピンカーブと急坂の続く、きつい山道をえっちらおっちらと登ってゆき、ついに頂上に到着。標高630m、おそらくR294最高地点である。郡山市と会津若松市という二大都市の境界とは信じ難い、ずいぶん淋しい場所である。

黒森峠。猪苗代湖が見下ろせるかと期待していたが、ご覧の通り見通しは悪い。黒森峠の名にふさわしい、どこか妖気漂う峠であった。

 この黒森峠は上の写真の撮影後にトンネルが開通し、曲がりくねった山道であった峠は今やほんの数十秒で通過できるようになった。まだ細い部分が多少残るものの、R294は会津若松〜白河のショートカットルートとして完成に近づいたといっていい。何気なく通過しているトンネルの真上には、こうして歴史を秘めた道が必ず存在しているわけである。

 3つの峠を越えた後はだんだんと民家も増えてゆき、会津若松市街手前でR49にぶつかってR294は見かけ上終わりを告げる。この後形式的にR49との重複区間が続き、R118の終点でもある北柳原交差点でR294トレースの長い旅は終わりを告げる。

終点、北柳原交差点。起点同様R294の表示は何もない。会津の灰色の空の下、多くの車が何の感慨もなく交差点を通過していた。

 というわけで全行程241kmを走り切った。とにかくあちこちにバイパスやら拡幅工事が行なわれており、国道指定当時そのままの部分は半分も残っていないと思われる。道ができあがり、徐々に改良され、人が集まり街ができるという進化の過程をそのまま見せてくれるような道である。福島の山の中の道をどんどん改良しているのが意外だったが、国家百年の計としてこれもまた必要なのかもしれない。

 R294は快走路あり、温泉あり、うまいものどころあり、歴史的な街道ありで変化に富んでいてなかなか面白い。一度訪れてみてはいかが。

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