国道139号線を行く・その1

 一口に国道といっても、これで120km/h出さなかったら男の恥、というような飛ばし放題の素晴らしい道路から、責任者を廊下に正座させて小一時間説教を垂れてやりたくなるような悲惨な酷道まで、まさにピンからキリであることはこのページを愛読していただいている方にはよくおわかりであると思う。

ところが、世の中には一本の国道でその両方を兼ね備えている道もある。今回はそんな二重人格的国道、R139を走ってみる。東京都奥多摩町〜静岡県富士市まで、136kmの行程である。

 実のところ、R139くらい妙な場所から始まる国道はそうはない。R139は八王子市街からくねくねと曲がるR411を走ること1時間半、東京の西の端っこの奥多摩湖畔でR411から分岐して始まるのである。以前も取り上げた通り、「ほんとに東京かよ!」と風景に向かってツッコミを入れてしまいたくなるくらいのとてつもない山奥だ。分岐した先はいきなり橋で、これが「深山橋」という名前だと言うから、なんとも念の入ったことである。

スタートの深山橋。ここにたどり着くだけで一苦労。

 そもそも国道というのは番号が大きいほど新しいわけであるから、R139がR411から分岐して始まっているということ自体妙な話だ。実はこの奥多摩〜大月の区間は、平成5年の法律改正によって新たにR139に組み込まれた区間で、国道としての歴史で言えばあのR469と同格なのである。実際この区間のヘボさ加減と来たら、東日本屈指のヘタレ国道R469に全くひけをとらない。

 スタート近くには、やたら車高の低い凶悪そうな顔つきの車が、普通の3倍くらいのエンジン音を響かせながらぶおんぶおん走っている。奥多摩という場所柄、峠の走り屋たちのメッカとなっているのであろう。そうした車もR139に入ってしばらくするとぴたりといなくなる。まあ走り屋さんに限らず好き好んで走る道ではないのは確かだ。

 橋を渡ってほんのしばらくで東京都区間は終わり、山梨県は小菅村に入る。

落石注意の電光掲示。へいへい、気をつけます。

 幸いにして落石はなかったが、しばらく行くとよれよれ区間に入る。筆者も最近は経験値を上げたおかげであまり驚かなくなったが、初めて迷い込んだ時にはこんな国道が存在していいのかと度肝を抜かれた。コンクリートの間に合わせ的舗装に似合わない、真新しいおにぎり標識が印象的ではある。

けっこうこの断崖はインパクトがあった。

 ここらはバイクの姿を多く見かけた。まあ車ではしんどいが、バイクで走り抜ける分にはなかなか爽快なのかもしれない。えっちらおっちらとヘアピンカーブを駆け上がり、ようやく松姫峠の頂上に到着。なーんも考えずに行ってしまったが、峠の標高は1250m、凍結していなかったのはラッキーというものであった。ちなみにこの名は、武田信玄の娘である松姫が織田勢から逃げ延びる時に越えたことに由来するそうである。

峠にある石碑。眺めはなかなかよいが、まあ本当に民家の一軒も見えはしない。

 峠からの下りはだいぶ整備され、数年前から比べると見違えるような道に変貌している。このへんでやっているダム工事のためでもあるのだろう。とはいえまだかなりのへっぽこ区間も残っており、筆者などは国道と間違えて工事現場に迷い込んでしまったくらいだ。めちゃめちゃけげんそうな目で見られたのはいうまでもあるまい。

このへんが一番ぼろいのだが、整備されて消滅する日は近そうだ。

 この区間を抜けると久しぶりに民家が見えてきて、妙にほっとする。自分で好き好んで行っておいて「ほっとする」もないもんだが、ともかく酷道区間終了はもうすぐだ。

久々の文明の光に心和む。まあここらも決していい道ではないのだが、妙に安心する。

 集落の中をにょろにょろと走るうち、道は大月市街でR20と合流する。ここらのR20は市街地をまともに通過し、道幅も幹線国道としてはちと狭いため、渋滞が多く走りやすくはない。しばらく行くとR139は再び都留方面に向けて分岐し、ここからが国道指定当時からのオリジナル区間だ。ここらは「富士みち」と呼ばれ、古くから富士への登山道として栄えた道である(と思う)。

白く見える高架橋は、リニアモーターカーの実験線。実用化する気はほんとにあるのだろうか。

 淡々と走るうち、道は富士吉田の市街に向けてゆるやかな上り坂となる。と、突然商店街の真ん中に、R139をまたぐ巨大な鳥居が出現する。撮影のため車を降りてカメラを向けた瞬間、思わず「あっ」と叫んでしまった。まるで鳥居が額縁であるかのように、富士山の美しいシルエットがすっぽりと正面に収まっていたのだ。この道は富士へ向けてまっすぐ進んでいる、というよりもすでにここはほぼ完璧な円錐形を描く富士山の裾野の一部だったのである。

写真だと富士山がはっきりしないのが残念。ちなみに右折方向はR137。

 この商店街の一本東側には4車線の広いバイパスが建設中である。「富士見バイパス」という名前そのままに、富士山を真正面に見ながら一直線に駆け上がる爽快な道路である。バイパスはまだ未完成だが、すでに新しい市街地が周辺にできあがりつつある。なんのかんのといいつつも、やはり一本の道路のもたらす経済効果は大きいのだ。

バイパス終点付近から富士山を望む。

信号だって富士山つき。

 R138との交点を右折してからはまた雰囲気が変わり、以後は観光地驀進モードになる。これ以降はその2にて。

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