〜〜メルマガ有機化学〜〜


↑NatureChemistry、いよいよ発刊目前!

 2009年 第9号 もくじ

1.今週の反応・試薬 2.注目の論文 3.安全な実験のために 4.館長の本棚 5.編集後記

有機化学美術館更新情報:(分館) Nature Chemistry第1号論文登場 30万Hit&週刊ダイヤモンド掲載 武田・TAK-242開発中止


 ☆今週の反応・試薬

 ・Claisen転位 その2

 この反応にはいろいろと応用編があり、γ,δ-不飽和カルボニル化合物を立体選択的に合成する常套手段となっている。

 (1)Johnson Claisen転位

 アリルアルコールとオルトエステルの酸触媒による交換反応→脱離を経てClaisen転位を起こす。N,N-ジメチルアセトアミドジメチルアセタールを用い、γ,δ-不飽和アミドを得る反応はEschenmoser-Claisen転位と呼ばれる。

 (2) Ireland-Claisen転位

 アリルエステルにLDAなどの強塩基・TMSClを加えてケテンシリルアセタールを発生させ、転位させる。中間体は単離することなく、ワンポットで加熱することで転位成績体を得る。

 ※いずれも高度な立体制御が可能であり、実用性が高い反応です。その他、Overman転位・アザClaisen転位などのバリエーションがありますので、こちらなど参照。

 参考:人名反応に学ぶ有機合成戦略 P88


 ☆注目の論文

・反応

2,4-Dinitrophenol as an Effective Cocatalyst: Greatly Improving the Activities and Enantioselectivities of Primary Amine Organocatalysts for Asymmetric Aldol Reactions
J. Org. Chem. ASAP DOI: 10.1021/jo802758b

 有機分子触媒を用いた不斉アルドール反応に、2,4-ジニトロフェノールが有効な助触媒になるという話。しかしなんでDNPなんだろ。

・全合成

Total Synthesis of Cribrostatin 6
Daniel Knueppel, Stephen F. Martin
Angew. Chem. Int. Ed. Early View DOI: 10.1002/anie.200806269

 不斉点のない化合物の合成でも、Angewandteに載るときは載る。市販化合物から5段階、一撃必殺。

Total Synthesis and Absolute Configuration of the Bisanthraquinone Antibiotic BE-43472B
K. C. Nicolaou, Yee Hwee Lim, Jochen Becker
Angew. Chem. Int. Ed. Early View DOI: 10.1002/anie.200900058

 アントラキノンが2つ連結したような化合物の合成。四級不斉中心が連結していて、相当厄介そう。自分だったらどう攻略するか……を考えてから中身を読むと、なるほどな感が味わえます。

Total Synthesis of Sporolide B
K. C. Nicolaou, Yefeng Tang, Jianhua Wang
Angew. Chem. Int. Ed. Early View DOI: 10.1002/anie.200900264

 もう一つNicolaou先生。これも事前に自分で考えてから中身に進むとよいかも。

Total Syntheses of Enokipodins A and B Utilizing Palladium-Catalyzed Addition of An Arylboronic Acid to An Allene
Org. Lett. ASAP DOI: 10.1021/ol9001637

 上で取り上げたEschenmoser-Claisen転位が登場します。小粒でもピリリと辛い全合成。

・その他

 It's Good to Blog
Nature 457, 1058 (26 February 2009) doi:10.1038/4571058a

 Nature誌から、研究者へのブログの勧め。掲載が決まった論文は、刊行を待たず自分の研究室のブログで取り上げ、自由に議論してよい(すべし)というお達しです。日本の研究室には、HPはあってもブログはあまりないですよね。これは成果発表の考え方がいろいろ変わっていくきっかけかもしれないです。参考:5号館のつぶやき


※興味深い論文などありましたら、mmorg-chem.orgまで(@を半角に変換してお送り下さい)情報をお寄せいただければ幸いです。反応・全合成の他、医薬品合成・超分子・材料・天然物化学などなど何でも結構です。

このほど、筆者が作成に関わりました「創薬化学カレンダー」を発売元からいただきましたので、情報をお寄せいただいた方にプレゼントしたいと思います。3報お送りいただいた方、先着8名ということで。できれば論文の内容に関するコメントもお願いします。どっと一気にまとめて送ってこられると大変なので、できればぼちぼちと。


 ☆安全な実験のために

 過酸化ベンゾイルにN,N-ジメチルアニリンを滴下したところ爆発を起こし、白色のキノコ雲が立ち上がった。

 過酸化ベンゾイルはラジカル反応開始剤などとしてよく使われますが、過酸化物の常で爆発性を持ちます。結晶状態で乾燥させると、熱・摩擦・静電気・衝撃などで容易に爆発を起こします。この化合物の誘爆傾向はTNTやピクリン酸といった爆薬よりも高いそうで、注意が必要です。

(参考:有機化学実験の事故・危険―事例に学ぶ身の守り方 p.92より)

 ☆館長の本棚

 世界は感情で動く (行動経済学からみる脳のトラップ)

 マッテオ・モッテルリーニ著 紀伊國屋書店 1600円

 前著「経済は感情で動くがベストセラーになった、モッテルリーニ教授の新刊。最近筆者も「結局世の中を動かしてるのは、理論じゃなく好き嫌いだよな」ということを改めて思っているので、買ってふんふんと納得しながら読んでおります。

 人間の直感というのは大事な能力で、これによって人間は思考のショートカットができ、重要な思索ができるのですけど、それは時として大きな落とし穴ともなりうる、という実例が多数並んでいます。掲載されたひとつひとつの実験やエピソードが面白く、すぐ人に話してみたい気分になります。この意味では、以前紹介した「アイデアのちから」に共通するものがあります。

 中でも印象深いのは、南アフリカのムベキ大統領のエイズ政策の話。彼が「西洋の会社が作った薬など、アフリカに損害を与えるための策略に過ぎない」と主張し、この薬の副作用を強調して宣伝したため、毎年数万人のエイズ感染新生児が生まれているという問題です。感情によってまず結論が決められてしまえば、間の理屈などはどうにでもつけられ、悲劇を呼びかねないという好例でしょう。我々は果たして彼のことを笑う資格があるかというと、これははなはだ疑問ですが。

 アマゾンの書評だと「翻訳が悪い」という声が多いようなのですが、筆者はさほど気になりませんでした。この辺は好みの問題でしょうか。


 ☆編集後記

 思い切り今さらなのですが、有機化学美術館の黒バックに白文字というのはどうなのかなと思い始めています。ま、暗闇に化合物が浮き上がっている姿は雰囲気があって好きなのですが、以前から「文字が読みにくい」という声もちらほら聞こえておりました。「別に何も見にくくないじゃん」と思っていたのですが、どうも最近目が悪くなってきたのか(乱視が入ってきたと思われます。決して老眼ではない。老眼ではないはずです)、自分で作ってるサイトが自分で読みにくくなってきたのですよ。

 世間のメジャーなサイトで黒バックのところってのはまずほとんどないですし、たぶんマイナスポイントなんでしょうねこれは。今から全部白にしてもいいんですが、そうすると実は画像がJPEGと透過GIFが入り混じっているので、えらく不細工なことになってしまうわけで。

 と、「もう少しデザインをなんとかしたい」と言い続けて10年以上が経ってしまっている、ダメ管理人の独り言でした。

----------------------------------------------------------------------
 メルマガ有機化学

 発行システム:『まぐまぐ!』 http://www.mag2.com/
 配信中止はこちら http://www.mag2.com/m/0000257060.html

 バックナンバーはこちら http://www.org-chem.org/yuuki/melmaga/mm.html
 またバックナンバーの検索は、下記「有機化学美術館」トップの右側検索ウィンドウで可能です。

 「有機化学美術館」:http://www.org-chem.org/yuuki/yuuki.html
 「有機化学美術館・分館」:http://blog.livedoor.jp/route408/
 ご意見・ご要望はmmorg-chem.orgまで(@を半角に変換してお送り下さい)
----------------------------------------------------------------------