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 2008年第32号 もくじ

編集長のパソコンがアクシデントで入院中ですので、前回に引き続き簡略版でお送りいたします。

1. 有機化学のことば 2.注目の論文 3.安全な実験のために 4.館長の本棚 5.編集後記


 ☆有機化学のことば

 ・有機化学のことば  有機化学では多くの接頭語が使われます。ギリシャ語やラテン語から来ているものが多いので、英単語にも同じ語源のものがたくさんあります。このため本来の意味を覚えておけば、英語を学ぶ際にも役立ったりします。

・cis-, trans-
cisは「こちら側」、transは「あちら側」を意味します。二重結合のあっち側かこっち側か、というところですね。トランスミッターは「あちら側へ送 るもの」、つまり送信機ですし、トランシルバニアは「森の向こうの国」、トランスポートも「あちら側へ運ぶ」、つまり輸送を意味します。

・オルト、メタ、パラ
ortho-は「直角」「まっすぐ」「正しい」の意味があります。まあ有機化学でいうオルト位は、直角でなく60°ですけど。「orthogonal」は「直交」の意味ですし、「orthodox」は「正しい考え」から転じて「正統的な」という意味で使われます。
meta-はいろいろな意味を持ちますが、この場合「〜の間」の意味のようです。オルトとパラの間ということですね。
で、「para」は「〜を越えて」「〜と逆の」という意味があり、反対側についた置換基という意味を表しているようです。「parallel」「paradox」なんかもここからきています。

・イソ
iso-もよく使われる接頭語で、「同じ」を意味するギリシャ語です。isotope(同位体)、isomer(異性体)などの言葉にも使われます。そう考えるとisomerの訳は「同性体」にすべきだったのではという気もしてきますが。
ちなみに中国語でもイソプロピル基は「異丙基」です。「丙」は何のことかというと、「甲」がメチル、「乙」がエチル、で「丙」がプロピルなのだそうです。 エタノールは「乙醇」、トリエチルアミンが「三乙?」、ジイソプロピルアミンが「二異丙?」だそうです。中国語の分子名は調べるとなかなか面白いです。

・エンド、エキソ(endo-, exo-)
endo-は「内側」、exo-は「外側」を表します。後者は「exotic」(異国風の)、「exodus」(脱出)、「exothermic」(発熱 的)といった英単語に使われます。「endo-」はendotoxin,endopeptidase,endocrineなど生物学用語に頻出します。興 味のある方は調べてみましょう。


 ☆注目の論文

・反応

Insights into Directing Group Ability in Palladium-Catalyzed C−H Bond Functionalization
Lopa V. Desai, Kara J. Stowers, and Melanie S. Sanford
J. Am. Chem. Soc ASAP DOI: 10.1021/ja8045519

C-H活性化。Directing groupのオルト位を、PhI(OAc)2で酸化してアセトキシ化する。先週もC-H活性化でWhite先生を取り上げましたが、この論文のチームも全員女性。HPにアクセスしてみたら、グループマニュアル(PDF)が細かくできていて非常に秀逸です。参考にすべきでは。

・全合成

A Base-Labile Group for 2-OH Protection of Ribonucleosides: A Major Challenge for RNA Synthesis Thomas Lavergne, Jean-Remi Bertrand, Jean-Jacques Vasseur, Francoise Debart
Chem. Eur. J Early View DOI: 10.1002/chem.200801392

RNA合成において問題となる2'位水酸基の新しい保護基の開発。というか、RNA合成ってのはまだずいぶん改良の余地がありそうなのだなということを初めて知りました。これから注目の分野だけに、結構宝の山かもしれません。

・天然物

Salvileucalin B, A Novel Diterpenoid with an Unprecedented Rearranged Neoclerodane Skeleton from Salvia leucantha Cav.
Yutaka Aoyagi, Akira Yamazaki, Chihiro Nakatsugawa, Haruhiko Fukaya, Koichi Takeya, Susumu Kawauchi, and Hiroshi Izumi Org。Lett. DOI: 10.1021/ol801620u

変な骨格の天然物。Paquette先生あたりが喜んで食いつきそうです。生合成機構は、こんなことが起こるのかなあという感じではあります。


 ☆安全な実験のために

 塩素ガスの入ったボンベが固まっていたので、暖めたり金槌を使ったりして数人がかりでこじ開けた。その瞬間塩素が噴出したが、固くて閉じられず、1名が塩素を吸い込んで病院へ運ばれた。

 これは怖いです。筆者の友人も、後輩が開けたボンベから噴出した一酸化炭素をまともに顔に浴びた経験があるといっていました(無事でしたが)。特に有毒ガスの場合、無理をせずに業者に任せる方が無難でしょう。

(参考:有機化学実験の事故・危険―事例に学ぶ身の守り方 p43より)


 ☆館長の本棚

 絶景ドライブガイド100選 永久保存版―よりすぐりのドライブ情報を満載 (学習研究社編 1200円)

 たまにはこんな本を。秋のドライブシーズンを迎え、ガソリンも下がってきたことだしどこか行ってみたいなということで購入。日本だけでこんなに見てないところ、美しい風景があるのかと思うと、走り出さずにいられない自分がおります(笑)。


 ☆編集後記

 台風やら汚染米やら世間はいろいろ大変ですが、みなさまはお変わりありませんでしょうか。ちと今週は仕事が立て込み、遅れての発行となりました。 パソコンも復帰しないし、環境も整わないままいろいろと連絡やら仕事やらが珍しく集中したのでなかなか大変です。忙しいときに限って用事が集中する、世間 で言うマルコフニコフ則というやつですね。
しかし早くPC戻ってこないもんかなあ……。

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