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 2009年 第11号 もくじ

1.今週の反応・試薬 2.注目の論文 3.安全な実験のために 4.館長の本棚 5.編集後記

有機化学美術館更新情報:(英語版)The World’s Strongest Acid (分館) 今月のお知らせ


 ☆今週の反応・試薬

 水素化トリエチルホウ素リチウム(LiEt3BH)

 ヒドリド還元剤の一つ。強力な求核性を持つことが知られており、Super Hydrideの商標で販売されている。トリエチルボランと水素化リチウムから調製するが、THF溶液で市販されているものを用いるのが一般的。水分と激しく反応するので不活性ガス中で取り扱う。

 アルデヒド・ケトン・エステルなどを還元して対応するアルコールに変換する。求核性が高いため、立体障害の高い基質もものともせず反応する。またエポキシドの還元に有効で、立体的に空いた方から反応する。

 

※「これで反応が行かなかったら諦めろ」といわれる、強力な還元剤です。ハライドを還元してアルカンにするにも有用です。


 ☆注目の論文

・反応

Direct Asymmetric Michael Addition to Nitroalkenes:Vinylogous Nucleophilicity under Dinuclear Zinc Catalysis
Barry M. Trost, and Julien Hitce
J. Am. Chem. Soc., Article ASAP ? DOI: 10.1021/ja809723u

 ニトロアルケンへの不斉Michael付加。こうなってくると、触媒設計も究極まで来つつある気がします。

Asymmetric Suzuki?Miyaura Coupling in Water with a Chiral Palladium Catalyst Supported on an Amphiphilic Resin
Yasuhiro Uozumi, Yutaka Matsuura, Takayasu Arakawa, and Yoichi M. A. Yamada
Angew. Chem. Int. Ed. Early View DOI:10.1002/anie.200900469

 ありそうであまり見たことなかった不斉鈴木-宮浦カップリング。さらに新しい不斉触媒の開発に結びつきそうです。

Expedient Preparation of All Isomers of 2-Aminocyclobutanecarboxylic Acid in Enantiomerically Pure Form
Carlos Fernandes, Elisabeth Pereira, Sophie Faure, and David J. Aitken
J. Org. Chem., Article ASAP ? DOI: 10.1021/jo900175p

 2-アミノシクロブタンカルボン酸の、4つの異性体の合成。医薬品のビルディングブロックなどに使い道があるのでは。

・全合成

From nature to the laboratory and into the clinic
K. C. Nicolaou, Jason S. Chen, Stephen M. Dalby
Bioorganic & Medicinal Chemistry 17 (2009) 2290?2303 doi:10.1016/j.bmc.2008.10.089

 Nicolaou先生、珍しくBMC誌に登場。この仕事量には何度見ても圧倒されます。

A Nine-Step Total Synthesis of (-)-Platencin
Konrad Tiefenbacher, and Johann Mulzer
J. Org. Chem., Article ASAP ? DOI: 10.1021/jo9001855

 新規抗生物質プラテンシンの新規合成法。この化合物も凄い競争になってますね。

Total Synthesis of Phomactin A
Yu Tang, Kevin P. Cole, Grant S. Buchanan, Gang Li, and Richard P. Hsung
Org. Lett., Article ASAP ? DOI: 10.1021/ol900237e

 ユニークな骨格を持つジテルペン・フォマクチンの全合成。大環状骨格だからどうせメタセシスだろ……と思ったらちょっと違う。

Total Synthesis of (-)-Lycorine and (-)-2-epi-Lycorine by Asymmetric Conjugate Addition Cascade
Ken-ichi Yamada, Mitsuaki Yamashita, Takaaki Sumiyoshi, Katsumi Nishimura, and Kiyoshi Tomioka
Org. Lett., Article ASAP ? DOI: 10.1021/ol9003564

 連続Michael付加を鍵段階にした、アルカロイドの全合成。

・その他

Trialkylamines More Planar at Nitrogen Than Triisopropylamine in the Solid State
Minmin Yang, Thomas Albrecht-Schmitt, Vince Cammarata, Peter Livant, David S. Makhanu, Richard Sykora, and Wei Zhu
J. Org. Chem., Article ASAP ? DOI: 10.1021/jo802086h

 以前ブログでも取り上げたトリイソプロピルアミン関連の話。個人的にこういうネタは好きです。


※興味深い論文などありましたら、mmorg-chem.orgまで(@を半角に変換してお送り下さい)情報をお寄せいただければ幸いです。反応・全合成の他、医薬品合成・超分子・材料・天然物化学などなど何でも結構です。

このほど、筆者が作成に関わりました「創薬化学カレンダー」を発売元からいただきましたので、情報をお寄せいただいた方にプレゼントしたいと思います。3報お送りいただいた方、先着8名ということで。できれば論文の内容に関するコメントもお願いします。どっと一気にまとめて送ってこられると大変なので、できればぼちぼちと。


 ☆安全な実験のために

 塩酸にパラホルムアルデヒド(CH2O)nやヘキサメチレンテトラミンを溶かすと、危険な濃度のビス(クロロメチル)エーテル(ClCH2)2Oが発生する。

 以前もMOMCl(MeOCH2Cl)の発ガン性について書きましたが、この化合物も発ガン作用の本体はビス(クロロメチル)エーテルであるといわれます。実験室でよく用いる試薬の中でも屈指の強力な発ガン性があるとされる化合物ですので、くれぐれも取り扱いに注意して下さい。

(参考:有機化学実験の事故・危険―事例に学ぶ身の守り方 p.71より)

 ☆館長の本棚

 有機合成のナビゲーター 上村明男著 丸善 3990円

 定番といえば定番かもしれませんが、今回はこの本を。有機合成反応の解説書ですが、単なる人名反応の羅列にとどまっておらず、「ああ、こういう手もあるのか」と目を開かされるような編集になっています。機構などの解説もわかりやすく、大学院生以上のレベルの方には手頃な参考書ではないでしょうか。


 ☆編集後記

 「ビーバップ!ハイヒール」は無事放送されたようです。というのはこちらからでは見られないし、DVDもまだ来てないんで、どこがどう使われたかさっぱりわからんからです。ぼちぼちやってくる感想によって、アレが放映されたんかorzとかいう情報が断片的に入ってくるという、本人的に非常に気持ち悪い状態です(笑)。

 それはそうと、「化学者のつぶやき」様で取り上げておられた「evernote」というフリーソフトを仕入れてみたんですが、非常に凄い代物ですね、これは。ここでは論文の整理用ということで紹介されていますが、他にもいろいろな機能を備えていて、これがタダってのが信じられないほどです。このメルマガや書籍執筆のデータ整理に、便利に活用させていただこうと思います。

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